Statistical Programming

DNAポリメラーゼの働き

バイオの知識を深めるために、これから毎日PDB-101: Home Pageの記事を和訳します。

本日はDNAポリメラーゼについて。以下、意訳。

生命の神秘

DNAポリメラーゼは生物的なプロセスにおいて重要な役割を果たしています。それは遺伝情報の複製を行います。細胞が分割される度、DNAポリメラーゼはDNAを複製し、親の細胞から子の細胞へと情報を受け渡し世代を超えて情報が伝えられていきます。このDNAの引き継ぎは地球に初めて誕生した頃の生命と私達の細胞が生物的につながりがあることを示しています。その点から考えると、私達のDNAはとても貴重なものであると言えるかもしれません。

驚くべき正確さ

DNAポリメラーゼは最も正確な働きをする酵素です。それは毎回正確にDNAのコピーを作成しつつも、10億に1回ミスするかしないかの精度を誇っています。これは私達の情報処理能力と比べても優れていることがわかります。なぜならそれは1000冊の小説を読んで、その中からたった一文字の誤字を見つけるようなものだからです。C-G、A-Tをマッチさせる(シトシンはグアミン、アデニンはチミンと対応づけられる)その素晴らしい能力は、それが高い正確性を兼ね備えているという特殊性を実現しています。しかしDNAポリメラーゼはそれだけではなく、DNAの複製後必ずその複製物を校正し必要とあらば誤った箇所を切り捨てることまでしてくれます。

囚人と血統

DNAはユニークですので、他人との識別に有効です。もし血痕の一つでもあれば、その血が誰のものなのか調べることができます。もちろん、血痕の中に入っているDNAの量はごくわずかのため、それを増やすためにDNAポリメラーゼが使われます。そのわずかなDNAはPCR(Polymerase Chain Reaction: DNAポリメラーゼの複製機能を利用してDNAを増やす手法)により増やされ、簡単に解析できるようになります。PCRのプロセスは以下のようです。まず、そのわずかなDNAは試験管にDNAポリメラーゼとともに入れられます。その試験管を温めると、DNAの2本鎖は2本に解かれます。DNAポリメラーゼは2本の解かれたそれぞれのDNAから、新たなDNA鎖を作成します。この新たに作成された2つのコピーDNAは同じように温められ、複製され、4本のコピーDNAになります。この反応を繰り返すことで大量かつ同一のDNAが複製されます。私達の体にある、通常のDNAポリメラーゼの場合、温めた段階で壊れて機能を失ってしまいます。しかしThermus aquaticusという、温泉に生息する細菌が持つDNAポリメラーゼの場合高温にも耐えることができるのですべてのPCRでそのDNAポリメラーゼが活用されています。ちなみに、これPDBに登録されているその酵素のデータです。

構造

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このシンプルな酵素は手のような形をしています。上記二つとも、細菌のポリメラーゼです。左がEscherichia coliで、右がThermus aquaticusのポリメラーゼです。左のE.coliポリメラーゼの下部に示された緑の領域はPDBに登録されておらず、上部がよく研究されています。面白いことに、親指とその他の指との間にはDNA鎖がちょうどフィットする間隔があり、実際その手のひらのような箇所にDNAがフィットします。写真で紫と緑に色が付いている、手の中央あたりでしょうか。金型となるDNAは紫、新たに複製されたDNAが緑色に色づけられています。この酵素は3つの活性な箇所があり、Synthesis(新規DNAが収まっている箇所), Proofreading(新規DNAを校正する箇所), そしてPrimer removal(DNA複製にRNAの断片を除去する箇所)と示されている箇所です。E.coliはProofreading機能がある一方、Thermus aquaticusはその機能がありません。

DNAポリメラーゼ

すべての生物はDNAポリメラーゼを持っています。とてもシンプルなものから全てを行うようなものまで。私達の体の中のポリメラーゼはより複雑な構造をしています。指輪のような形のものやαヘリックスを解いたようなものものなどの複数のタンパク質から成っています。

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上の写真は左上がE.coli、右上がヒト、下のがウイルスのDNAポリメラーゼです。それぞれ形も大きさも異なりますが、DNAの包み方や合成反応などは似通っています。